試験飛行
ー 歴史的な機体と
クラフツマンシップへの賛美
ジャスパー・ファン・ブレイデル
Jasper van Bladel

取材・撮影もこのマクロレンズが1本あれば間違いなし。
"Egmond Vintage Wings"の職人技と歴史的な航空機を取材するため、
新しいSIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO|Artを手に、ホーヘフェーン空港の格納庫へ向かいました。

"Egmond Vintage Wings"は、ジャック・ファン・エグモントとその家族の情熱が生んだ会社です。ジャックは常に航空機に囲まれた生活を送ってきましたが、その英知を家族や多くの熱心な技術やパイロットに伝えてきました。格納庫には、1930年代から1940年代に製造された非常に素晴らしいヴィンテージ機が並びます。もちろん、これらは実際に飛行用として使われていたものです。中でも名の知れたプロジェクトは間違いなく、ジャックと孫のトムが初期の仕様とエンジンの再現を目指す「Fokker D-21」でしょう。家族が愛情を込めて"kist"(オランダ語で"木箱")と呼ぶこの非常に特別な機体は、愛好家の間では「フライング・ダッチマン」の愛称で知られています。オランダの伝説的な航空機メーカーであるフォッカー社が最後に製造した最速のシングルエンジンの戦闘機で、ジャック一家にとってこのFokker D-21の復活はまさに夢そのものといえます。まだ飛行には至っていませんが、近い将来間違いなくそれも達成するでしょう。


クラフツマンシップ
こういった古い航空機のメンテナンスや製作には高い技術と精度が求められるもので、ジャック一家にとってそれはもはや趣味というよりもライフスタイルに近いものです。航空機は彼らの人生そのものであり、機体を更に理想に近づけるため片時も格納庫を離れず作業を続けています。
これは、レンズを最高の形に仕上げるために最善を尽くすSIGMAの技術者にも通じる姿です。言うまでもなく、レンズ開発も非常な精密な作業であり、高い精度と技術が求められるからです。

広い守備範囲
SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Artは、そのスペックからいわゆる定番のマクロレンズという印象を受けますが、この"Egmond Vintage Wings"の撮影で見せた優れた対応力から、真のオールラウンダーであることを実感しました。
今回、カメラはPanasonic S1Rを使用しています。フォトレポートは物語を伝えるものです。そのため、写真家はその物語のあらゆる側面をとらえるために、クローズアップ撮影のためのマクロレンズや、ポートレートから全体まで写せるレンズなど、様々なツールを用意する必要があります。その点、SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Artは驚くほどに汎用性に優れており、これ1本でどんなシーンにも対応できます。最短撮影距離が非常に短いので被写体にぐっと近寄ることもできますし、105mmの焦点距離はフルフレームの美しいポートレート撮影にも使えるだけでなく、物事の全体を捉えることも可能です。



作業所で撮影したこの写真からも分かるように、このレンズは狭い場所でも使うことができます。同じく容易に小さなバネの細部まで捉えています。
格納庫では、ジャックの孫で飛行士のトムを撮影しました。眼鏡、ガスマスク、パラシュートという昔ながらのパイロット姿です。このような撮影には通常なら24-70mmを使うのですが、この105mmも完璧に仕事をこなしてくれました。印象的なフォッカー D-21のフロント部分とトムとを引きで収めたカットも、もちろんこの105mmによるものです。


えもいわれぬ描写
この汎用性は、もちろん優れた光学性能抜きには活かせません。本格的なマクロ写真からポートレートまで、この105mmで撮影したすべての写真は非常にシャープな仕上がりです。作業場で撮影されたディテールや、曇天の空とコントラストを成すFokker D-21の迫り来るようなリベット接合の描写。これがこのレンズのシャープさを表しています。 撮影中は、画面周辺部の描写に特に気を配っていました。コントラストや光量の変化、空を写すときに注意すべき逆光環境など、条件次第では特に描写の悪さが目だってしまうからです。しかし、そんな心配をよそにSIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO|Artはそれらを見事に処理、ここでもその対応力を発揮してくれました。このレンズはどんなに困難なシーンにあっても期待を裏切らないはずです。 さらに、このレンズはアウトフォーカス部が印象的なボケ味になるのも特徴です。こちらの旋盤のクローズアップ写真を見てください。きらめく金属のカールと美しいボケが組み合わさって、魅惑的な雰囲気を作り出しています。

快適な道具として
私は最近マニュアルフォーカスで撮影することが多く、今回もほとんどの写真をマニュアルフォーカスで撮りました。フォーカスピーキング機能と組み合わせると非常に使いやすく、正確にピント合わせができます。特にクローズアップ撮影やマクロ撮影では、狙った場所に正確にピントを合わせられるかどうかが重要なので、完全にピントをコントロールできるマニュアルフォーカスは便利でした。
また、オートフォーカスでも撮影してみました。フォーカススピードは超高速というわけではありませんが、滑らかかつ正確で、このようなレンズの場合は速さよりも重要な要素になります。レンズ自体の素材も上質です。とりわけ目を引くのはスムーズに動く大型のフォーカスリングです。マニュアルフォーカスでピントを合わせる際に、とても正確に操作できます。レンズに備えられたスイッチ類は、AF/MFの切換えができ、絞りリングのクリック音のON/OFF切換えもできるので動画撮影にも適しています。絞りリングは絞りを素早く直感的に変更できる、ちょっと気の利いた、便利な機構です。
Panasonic S1Rとのバランスも完璧ですが、非常にコンパクトなSIGMA fpとの組み合わせも使い勝手は抜群です。重さもサイズも丁度良いので、要するにこのレンズは仕事に最適なツールだと言えます。



最高品質のマストアイテム
製品名にも含まれる"マクロ"という言葉は時に、SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Artのポテンシャルを狭めてしまうことがあるかもしれません。けれども、このレンズは単に「等倍で美しいマクロ写真が撮れる」レンズではありません。最高の光学性能を誇り、無限の撮影スタイルに対応可能で、なおかつ完成度の高い多彩なフォトレポートにも最適な必携レンズなのです。
