ガラスと金属を超える存在。
光の魔法と空間の魂を見る。 

私が写真の道に進むことを決めたのは、大学で建築アシスタントの仕事をしていたときでした。たまたま教授から、彼のミラノでのプロジェクトを撮影するよう頼まれたのです。私はLinhofの5×7インチを購入し、仕事に臨みました。それ以来写真家として活動することになるのですが、建築は私のキャリアにおいて間違いなく常に、最も情熱的なテーマでした。

私にとって建築を撮影するということは、常に人類の英知と出会う旅でもあります。建築とは、人間の創意工夫と、そこで流された汗、そして芸術による賜物なのです。優れた建築物に足を踏み入れるとき、私はクリエイターの心の中に入り込みます。その建築を支える技術的な知識やスキル、ときには古代の知恵、他に類を見ない形状、理想の環境を実現するために講じられた究極の解決策の数々。そういった建築の随所に宿るものに、恍惚を覚えながら感嘆するのです。

今回の撮影では、私の住むイタリアのアブルッツォ州ペスカーラにある、1890年代頃に建てられた2つの教会を選びました。どちらも第二次世界大戦の終わりにナチス軍が撤退した際に破壊されましたが、現在はオリジナルに非常に近い形で再建されています。 

教会は他の一般的な建物とは一線を画す建築物です。神と信者の間に設けられた架け橋であり、そこに足を踏み入れた者に尊敬の念を抱かせるような厳かな雰囲気を演出する必要があります。写真と同様に、光はこういった特別な空間で重要な役割を果たします。写真家として、光と影の構図を試行錯誤することはいつも楽しいことですが、明るさを際立たせるためには暗闇が重要です。

このレンズでの撮影期間中は、ほとんど雨か曇りでした。そのため、教会の中はかなり暗く、三脚なしで撮影するのは難しい環境です。裏を返せば、大口径のSIGMA 14mm F1.4 DG DN｜Artがもつ、開放でも素晴らしいシャープネスとクオリティを活かす素晴らしい機会でもありました。雨と寒さにも関わらず礼拝に訪れていた数人の周りを音もなく歩き、十分な明るさがあるところから薄暗い光の中まで、彼らの邪魔にならないよう撮影しました。SIGMA fp Lの電子シャッターのおかげで、私は物音をたてずに仕事に集中することができました。

撮影を進める中で、SIGMA 14mm F1.4 DG DN｜Artの高い性能に感銘を受けました。F1.4でも隅々まで非常にシャープで鮮明なコントラスト、かつ歪みも見られず、超広角としては信じられないほど気持ちの良いボケを実現してくれます。SIGMA 14mm F1.4 DG DN｜Artは、プロフェッショナルがSIGMA Artラインレンズに期待するものだと思いました。妥協のない、堅牢堅固な純日本製です。

※ 撮影データの記載なき写真はSIGMA 14mm F1.4 DG DN | Art以外のレンズで撮影されています。

レンズがガラスと金属による集合体以上の存在になり得るとしたら、このレンズがまさにそれです。私はこの撮影で、光の魔法を目の当たりにし、空間の魂に触れた気がしました。写真は解像力だけでなく、感情からも作られています。新しいSIGMA 14mm F1.4 DG DN｜Artは、そうした精神をも捉えるのに完璧なレンズです。

SIGMA 14mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp L, ISO 1600, F1.4, 1/60s