片岡 紘康
デザイナー
Produce: Yoshinao Yamada, Photo: Hiroshi Iwasaki, Video: DRAWING AND MANUAL
※この映像では、日本語と英語の字幕表示が設定できます。
“サードパーティーのアクセサリー開発を
後押しする取り組みまで発表されたときに
「あっ、なるほど、それで俺呼ばれたのかな」
ってちょっと思いました(笑)”
3Dプリンターを使ってカメラのアクセサリーを色々作っています
片岡紘康です。3Dプリンターを使ってカメラ用のアクセサリーを色々作っています。SNSではfoxfoto(フォックスフォト)というアカウントで活動しています。元々は自動車メーカーのデザイナーをしていて、趣味としてもクルマやバイクなど乗り物全般が好きだったんですが、段々とカメラや写真に興味が向いていって、転職して撮影会社のアシスタントフォトグラファーもやるようになりました。その後フリーでデザイナーとフォトグラファーと半々の活動をしていた頃に家庭用の3Dプリンターという物が世に登場し始めて、それを買って自分で色々と作り始めたのがきっかけで今に至る、という感じです。
常にそういった視点で物を見たり触ったりする癖は
カメラであれなんであれ、今も変わらず残っていますね
前職では自動車のインテリアデザインを担当していたんですけど、自動車のインテリアって物がすごく多いんですよね。ステアリングだったりシフトノブだったり、シートだったりメーターだったり。それらをパーツ単位で分担してデザインしていきます。とても1人で全部出来る事ではないので、当時新人の私でも色々と担当させてもらえました。どのパーツも人が実際に触れて操作する物ですし、しかも視線を奪ってはいけない。前方を見ながら手の感触だけで確実に操作出来る形状、誤操作をしない形状、レイアウトなどをずっと考えていました。常にそういった視点で物を見たり触ったりする癖はカメラであれなんであれ、今も変わらず残っていますね。
「カメラ用にも何か作ってみようかな……」と思っていった
自分でカメラを買うきっかけになったのは仕事で必要だったからです。デザイナーとして仕事をする中で、ライバルメーカーの競合他車を常に研究していました。ライバル車種の取材で写真を撮る事が多くて、会社にも取材用のカメラはあったんですけど、古くて。自分用にもカメラがあった方が良いだろうと。狭い車内で使うので大きな一眼レフではダメで、でもインパネ全体が撮れる広角レンズが必要で。当時はまだミラーレスとかなかったので、専用ワイコンを装着して換算19mmで撮れるリコーのGX100を買いました。完全に仕事用として買ったんですけど、使っていく内にどんどん写真を撮る事自体が楽しくなっていって、気が付けば仕事でもプライベートでも常にカメラを持って歩くようになっていました。それで最初は「いかにもオタクっぽいから」と敬遠していた一眼レフカメラにもとうとう手を出しちゃって、最後には転職までして(笑)。
それからしばらくはものづくりから遠ざかっていたんですけど、2013年頃に家庭用の3Dプリンターが出始めて、「久しぶりに何か作ってみたいなぁ……」と思い購入したんです。最初は家の中で必要になるちょっとしたパーツや、対応していないプロダクト同士をつなぐアダプターとかを作ったりして、日常の中でなんか使いづらいな~とか、イマイチだな~と感じる部分を解決したり改善したり、本当にちょっとした物ばかりなんですけど、楽しくって。そうしていく内に「カメラ用にも何か作ってみようかな……」と思っていった。
カメラ用で最初に作ったのはDP Merrill用のパーツ
カメラ用で最初に作ったのはDP Merrill用のパーツでした。とにかく画質が良くて当時一番愛用していたんですけど、最初からバッテリーが2本同梱されてるぐらい燃費の悪いカメラで(笑)、近所をちょっと撮り歩くにも常に予備バッテリーを持ち歩かないといけなくて。それで「カメラ自体にバッテリーをもう1本装着出来たら便利かもな……」と思って、DP Merrill用のバッテリーを収納できるグリップを作った。まだ本当の試作品レベルでしたが、丁度その頃SIGMAの本社で開催された製品体験会に持って行ったら、写真家の三井公一さんに「何それ!なんか面白そうなの付いてるじゃん」って見つかって(笑)。当時はまだ3Dプリンターが珍しかったというのもあって、色々と話が盛り上がる中で「もっと色々と作ってみなよ!」という流れになって、「確かにカメラ用のパーツを作っていくのも面白そうだぞ……」と。
注文をきっかけに
濃いカメラ談義に発展することが多くなっていって
一般向けに初めて販売を開始したのはdp2 Quattro用のフードです。純正のフードよりもコンパクトで、常につけっぱなしに出来るフードがあれば使い勝手が良いんじゃないかと思って製作過程をSNSで逐一発信していたら、段々と反響が大きくなってメールで注文も頂けるようになっていって。注文してくださる方もやっぱりみんなカメラ好き、写真好きな方なので、単純に事務的なメールではなく、「最近このカメラ買って、ここがこう気になるんだけど、こういうパーツ作れませんか?」みたいな、注文をきっかけに濃いカメラ談義に発展する事も多くなって、そうしている内にアクセサリーの数もどんどん増えていった。
買って使ってみると「なるほどなぁ」と思うところが多いですね
SIGMAのプロダクトデザインについては、とても奇抜だけど同時にすごく整理されているという印象です。デザインデザインした装飾的なアイコンを使うんじゃなくて、とにかく機能がシンプルにまとめられているのが好印象だなと。dp2 Quattroも発表当初はあの奇抜なフォルムに驚かされましたけど、買って使ってみると「なるほどなぁ」と思うところが多いですね。ボタンのレイアウトとか、一つ一つがすごく整理されてシンプルで、それが他のカメラやレンズでも統一されていて、非常に好きです。
「何これこんなに小さいのにフルサイズ!?」
fpの発表は本当に驚きました。「何これこんなに小さいのにフルサイズ!?」と。写真と動画の非常にハイブリッドなカメラなのだという感覚はあったんですけど、山木社長のプレゼンが進んでいく中で製品の3Dデータを公開してサードパーティのアクセサリー開発を後押しする取り組みまで発表された時に「あっ、なるほど、それで俺呼ばれたのかな」ってちょっと思いました(笑)。
実際、発売後はメーカーや個人問わずアクセサリーを作っている方も出てきているので、これからそちらの面でもどんどん盛り上がっていくんじゃないかなと思っています。
動画ってやっぱり、システムの拡張性が本当に重要だと思うんです
自分が一番最初に買った一眼レフカメラがEOS 5D Mark IIで、一眼ムービーのはしりのカメラだったんですね。ある意味fpとすごく近い性質のカメラでした。それがすごく魅力的で、もちろん仕事の取材にも使うんですけど、自分の作品づくりとしても当時は動画と写真を半々で撮ってました。それから徐々に写真の比率が上がっていって、DP2 Merrillなどを使う頃になるとFoveon機は動画が撮れないこともあって、最近は殆ど動画は撮っていませんでした。でもfpみたいなカメラを出されたら久々に動画も撮ってみようかなという気持ちになってきますね。動画ってやっぱり、システムの拡張性が本当に重要だと思うんです。歩きながら手持ちで撮るスタイルもあるし、今回のこの収録みたいに三脚を据え置いて周辺機器もいっぱい繋いで、っていうスタイルもある。私もfpで動画を撮ってみて、必要と感じるアクセサリーを製作していこうと思っています。
予想の斜め上をいって驚かせてくれるSIGMA
今、SIGMAはマウントが一眼レフからミラーレスに切り替わっていくタイミングだと思うので、非常にワクワク感が強いです。ここ数年のSIGMAの勢いが、マウントの変更によってどう変わってくるのか非常に楽しみに感じています。fpもまだまだ楽しく使っていますし、次に出てくるカメラにも期待しています。アクセサリーを作っている側の目線でもそうですし、やっぱりいちユーザーでありいちファンなので、いつも予想の斜め上をいって驚かせてくれるSIGMAがこれからどんな物を出してくるのか、今後の発表に期待しています。