変わるものほど変わらない本質
~10年の記録
DC DN Contemporary|FUJIFILM X Mount
ニコラ・ダティッシュ&グザビエ・アンドゥジャー
Nicolas Datiche & Xavier Andujar
フランスを母国とする"外国人"でありながら、在日10年の"地元民"でもある、
2人の写真家が写真を通して探る、日本への情熱。
2013年から東京在住のNicolas Datiche(二コラ・ダティシェ)。2014年から兵庫に住み主に大阪で活動する、Xavier Andujar(グザビエ・アンドゥジャー)。日本の2つの大都市で活動する2人のフランス人写真家は京都での出会いをきっかけに、2022年に「Koga Photos」を共同設立しました。
ニコラ氏とグザビエ氏には、日本に心惹かれ、長く滞在することを決めた多くの人々の代表として、日本の有名な2つの都市で、どのように写真とともに生きているのか、なぜ長い年月を経て今日まで2つの都市の写真を撮り続けているのか語っていただきました。
写真を通して2人の人生と活動について対話し、彼らの物語を探っていきます。
※ 撮影データの記載なき写真はSIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary以外のレンズで撮影されています。
2人にとって「東京/大阪を撮ること」とは?
東京/大阪に10年住みながら、それぞれからいまも受けるインスピレーションとはどのようなものですか?また、モチベーションは?
ニコラ:
東京は世界最大の都市であり、「メガロポリス」を完璧に体現しています。そして「生きもの」のように私を魅了します。日本の首都は常に変化しています。この都市には何か有機的なものがあるのです。この都市を撮影することは、その進化や変化を通して、ひとりの人間を記録するようなものです。東京は、ニューヨークやパリのように「訪れたことがなくても最もよく知られている」と表現できる都市のひとつだと思います。写真や歴史のみならず、映画や文化、テレビ番組などでも取り上げられるため、たとえ訪れたことがなくても、「渋谷のスクランブル交差点」や「東京湾の高層ビル群の夜景」を知っている人は多いでしょう。
グザビエ:
大阪は私にとって特別な都市です。そして日本で最も古い都市のひとつでもあり、すべての歴史を通して培われた非常に強いアイデンティティを持っています。街のつくりや人々の語る言葉、さらには食べ物まで、ここに住み、ここで見るものは日本という国のなかでも特にユニークです。数年間、この街を撮影し観察してきた私がこの街に惹かれ、記録し続ける理由は2つあります。
1つ目は、人です。大阪の人はとても強くて面白い個性を持っていると思います。2つ目は、時とともに変化する街の姿です。現在の大阪は私が来た頃の姿とは異なります。その変化が私を惹きつけます。完全に元の形から新しく変わり、近代日本らしい「無菌状態」になった場所もあれば、逆に時を重ねていった場所もあります。そしてそのような場所も、変化するのは時間の問題であることを私は知っています。また、新型コロナウイルスの流行によって、かつては街の中心としてダイナミックに栄えていた場所がその活気を失い、完全に消え去る様も目にしました。この全てが、長期的なプロジェクトに取り組みたい写真家にとって、強く惹きつけられるものなのです。
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-S10, ISO 160, F4.5, 1/4000s | Nicolas Datiche
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-T3,
ISO 400, F2.8, 1/2000s | Xavier Andujar
日本での生活が長くなり、日本に対する印象も変わってきたのではないでしょうか。この10年で、あなたの写真の中で変わったことは何ですか?また、変わらないことは何でしょうか?
ニコラ:
東京での最初の数年間は、すべてが「新しく」「奇妙で」「驚くべき」ものでした。しかし、その中に「秩序」も見出したことで、この東京という生きものに対する私のアプローチは、よりドキュメンタリー的なものになっているように思います。当初から変わらずに心惹かれるのは、この街の光です。高層ビルに反射する昼下がりの光は、私を魅了し続けています。
グザビエ:
はじめてこの街に来たときは、すべてが新しく、この国についても何も知らなかったので、分かりやすいもの、初めて見るもの、感動したものを中心に撮影しました。すなわち、漢字だらけの看板や夜の繁華街の明かり、人々、寺院など、私の目を楽しませてくれる写真をたくさん撮りました。だんだんと慣れてきてからは、自分の身の回りのものが少しずつわかるようになり、昨日まで驚きだったことが、今日は当たり前のことになり、そのようにして私の写真は少しずつ進化してきたように思います。街で見かけるモノそのものより、そこで何が起きているのか、人々は何をしているのか、国はどのように発展していっているのか、私の心の奥底を突き動かすものを撮影するようになりました。
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-S10, ISO 160, F4.5, 1/4000s | Nicolas Datiche
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-T3,
ISO 400, F5.6, 1/4000s | Xavier Andujar
スナップ撮影に欠かせないことは何ですか?また、東京/大阪でスナップ撮影をしたい人に向けて、何かアドバイスがあればお願いします。
ニコラ:
最も重要なことは、好奇心を持つことだと思います。あまり頭でっかちにならず、パターンや瞬間に身を任せ、光を探すことです。また、歩くことが好きでなければなりません。東京は巨大な都市なので、自分の足で歩いて発見しなければなりません。静かに迷子になるように、この街を受け入れてください。また、これは言うまでもないことかもしれませんが、使い慣れたカメラとレンズ、そして歩きやすい靴も忘れずに。
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-S10, ISO 160, F2.8, 1/4000s | Nicolas Datiche
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-S10,
ISO 2500, F2.8, 1/400s | Nicolas Datiche
グザビエ:
スナップショットを撮るときに必要なのは、自分が何を語りたいかを明確にすることだと思います。常に頭の片隅にテーマがあると良いですが、無くてもシンプルに心に響くものを撮ることです。そして、自分の周りで起こっていることに集中し、あとは何も考えなくてもいいように、自分が慣れ親しんでいる機材や設定を使うことです。
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-T3,
ISO 800, F4, 1/125s | Xavier Andujar
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-T3,
ISO 800, F2.8, 1/125s | Xavier Andujar
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-T3,
ISO 400, F2.8, 1/125s | Xavier Andujar
東京/大阪のような巨大都市での撮影において、カメラやレンズの技術的な向上は、新しい視点を与えてくれましたか?
ニコラ:
私は低光量でも美しい画が得られる高感度ISOに対応するセンサー、そしてますます向上した光学性能と高速AFを搭載したレンズの2点を挙げたいです。
グザビエ:
私が恩恵を受けている主な変化は、夜間でもノイズなく撮影できるセンサーの性能だと思います。また、ミラーレスカメラの登場により、FUJIFILM Xマウントのボディに、SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporaryのようなコンパクトなレンズを使えるようになりました。このレンズは非常に軽量で、絞り開放で全域シャープに撮影できるプロの品質も備えています。
東京/大阪のような都市を撮るのに、ズームレンズは良い相棒になり得ますか?
ニコラ:
東京の街は広いので撮りたい写真すべてに対応できるレンズがあるのは強みです。
カメラバッグの中を引っかき回してどのレンズを使おうかと迷ったり、探したりするのは最悪ですからね。SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN|Contemporaryは軽くて、描写は素晴らしく細密です。この小さなレンズを1本ボディに装着しておけば、1日東京を探索するのに必要なのはポケットに予備のバッテリーを1、2個と歩きやすい靴だけです。
グザビエ:
私にとってこのレンズの最大の魅力は、これ1本で何でもできることです。SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN|Contemporaryは非常に使い勝手が良く、風景からポートレート、ストリート写真も撮れますし、本当に小さくて軽く、開放F値が2.8なので夜明けから日暮れまでの長い一日でも持ち歩くのに完璧です。実を言うと、サイズ、重量、光学性能の理由からズームレンズがあまり好きではありませんでしたが、このレンズは旅行時の私のメインレンズとなるでしょうね。
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-T3,
ISO 1600, F2.8, 1/125s | Xavier Andujar
ニコラ氏とグザビエ氏にお互いに質問していただきました
グザビエ:日本を記録している写真家で、お勧めの人はいますか?理由も教えてください。
ニコラ:
私は、70-80年代の東京や日本、アジア諸国を撮影したカナダの写真家、グレッグ・ジラードが大好きなんです。彼の写真は、在りし日の東京の強い証言でもあり、私たちが今日、明日、撮ることができる写真のドキュメンタリー的価値について考えさせてくれます。そして東京に10年間住む私のような者であっても、この永久に変化し続ける都市においては、これらの「平凡な写真」もドキュメンタリー価値を持つだろうという、ある種陳腐ともいえる考えを思い起こさずにはいられないのです。
グザビエさんは、最近発見した写真家で紹介したい人はいますか?
グザビエ:
私が紹介したいのは、オカダキサラという写真家です。彼女の撮る東京の街角の風景はユーモアに溢れていて、とても好きなんです。
グザビエ:東京をこれだけ長く撮り続けるための秘訣は何でしょうか?
ニコラ:
インスピレーションの欠如は、時にその場所を平凡なものにしてしまいますが、好奇心を持つこと、考え過ぎないこと、そして自分を表現するのに東京のような撮影活動の場があることがいかに幸運であるかを意識することでしょうか。
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-S10, ISO 250, F2.8, 1/800s | Nicolas Datiche
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-S10, ISO 250, F2.8, 1/200s | Nicolas Datiche
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-S10,
ISO 160, F2.8, 1/250s | Nicolas Datiche
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-S10,
ISO 800, F4.5, 1/100s | Nicolas Datiche
ニコラ:大阪で写真を撮るのに好きな時間帯はありますか?
グザビエ:
写真を撮る時間にこだわりはありませんが、大阪を撮影するのに最適な時間を強いて選ぶとしたら、夜ですね。街のすべてのエネルギーが表出する時間帯です。
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-T3,
ISO 1600, F2.8, 1/30s | Xavier Andujar
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-T3,
ISO 1600, F2.8, 1/30s | Xavier Andujar
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-T3,
ISO 1600, F2.8, 1/60s | Xavier Andujar
グザビエ:東京で最も撮影に苦労する場所とその理由を教えてください。
ニコラ:
私は一日の終わりの光、特に大きな高層ビルの窓に射し込む光が好きなんです。この「ガラスのタワー」の中では、いくらでも光と影のパターンで遊べますし、日常的な風景もあります。しかし、残念ながら民間企業の建物では、入れるところもあれば一般に公開していないところもあります。でも、いつも挑戦はしています。警備員が来たら、丁寧に謝ってその場を去りますが、写真家として、写真を撮るために何かを試みることは良いことだと思います。敬意を払い、礼儀正しくしていれば、東京で写真を撮るのに困難な理由は何もありません。
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-S10,
ISO 250, F2.8, 1/320s | Nicolas Datiche
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-S10,
ISO 500, F3.2, 1/500s | Nicolas Datiche
ニコラ:最近、街で撮影するとき、どんなことにインスピレーションを受けていますか?
グザビエ:
街で撮影するときは、音楽からインスピレーションを受けることが多いですね。その街やその時の気分、プロジェクト、時には使用する機材によって、音楽のスタイルやアルバムを選ぶことが多いです。今回SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporaryで大阪を撮影したときは、フランスのラッパー、オレールサンの最新アルバム「Civilisation」を聴きましたが、このズームレンズとその時の私の気分にぴったりでした。
SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, FUJIFILM X-T3,
ISO 800, F2.8, 1/125s | Xavier Andujar