広角レンズの最高峰
SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art Impression
インプレッション
ミハウ・カウズニ|Michał Kałużny
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SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art, SIGMA fp, ISO 2500, F1.4, 3.2s
私は小さい頃から夜空に魅了されてきました。来る日も来る日も遥か遠くの夜空を眺めているうちに、宇宙への興味が湧いてきました。最初は小さな双眼鏡での天体観測、それから天体望遠鏡、そしてやがて天体写真撮影へと関心が移っていきました。遠くの星雲や銀河、星々を写真に収めることで、銀河系の遥か遠くまで見通したいという子ども時代の夢は満たされました。天体が放つ光は、宇宙空間をはるばる超えて、あるものは何十万年もの時間をかけて私たちのもとに届きます。私たちは今その光を写真に収めているのです。これこそが宇宙!私にとって、天体写真は時空を超えた旅です。夜空の写真は、ひとつとして同じものはありません。夜の空はいつも少しずつ変化しています。私は、多様で興味深い夜空の姿を捉えるために、新たな撮影場所を探し続けています。
経験上、広角レンズを使った撮影は夜空を撮る際に最も心躍る手法のひとつです。十分に暗くて視覚的に魅力あるロケーションと明るいレンズがあれば、夜間撮影はとても楽しいものになります。夜空の下で過ごす時間はわくわくする冒険のようなもので、その楽しさが写真に結晶するのです。
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SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art, SIGMA fp, ISO 2500, F1.4, 10s
手元に届いたSIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Artを見て、これはアイスランドでの撮影にぴったりなのではないかと考えました。アイスランドには素晴らしいオーロラが現れます。美しくダイナミックなこの現象を写真に収めるのは簡単なことではありません。なぜなら、オーロラはほぼ全天を覆い尽くす光であるだけでなく、その形や色、明るさが刻々と変化していくからです。この美しい自然現象を写真に収めるためには、露出時間を短くしなければなりません。そのためには、明るいレンズを使用し、高いISO感度で撮影する必要があるのです。
アイスランドを撮影地に選んだのは、オーロラが見られるからという理由だけではありません。オーロラだけでなく、写真家に驚異的なインスピレーションを与えてくれる土地だからです。アイスランドの独特な地形と夜空のスペクタクルとが組み合わされば、特別な写真を撮影できる可能性が無限に広がります。
行き先は決まりました。SIGMA fpと世界初のF値1.4の対角魚眼レンズ※をバックパックに詰め込んで、私の旅が始まりました。
※民生用の35mmフルサイズカメラ用の交換レンズとして。(2024年2月現在、当社調べ)
このレンズは、夜空の撮影に適した機能をいくつも備えています。私が特に気に入っているのは、SIGMA 14mm F1.4 DG DN | Artと同様に、回転式の三脚座を搭載しているところです。水平を取りやすく、横構図から縦構図へのフレーミングの切り替えも簡単に行えます。これは非常に重要なポイントです。というのも、星の動きをトラッキングしている時でも、セットアップをバラして組み直す必要がないからです。留めネジを緩めて回転させれば、もう準備完了です。シンプルですが、とても機能的です。さらに、三脚座は一般的なアルカスイス規格準拠で、三脚やトラッキングシステムへのレンズ装着がさらに簡単になっています。私はこのレンズをコンパクトなSIGMA fpに装着して撮影しましたが、この組み合わせは非常にバランスが良く、精密なフレーミングを可能にしてくれました。
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*撮影データの記載なき写真はSIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art以外のレンズで撮影されています。
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SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art, SIGMA fp, ISO 2500, F1.4, 3.2s
MFLスイッチによるフォーカスリング操作のロック機能も実用性の高い機能です。夜間撮影では、異なる構図を試すために三脚をつけたままカメラを移動させる必要があるのですが、その際に予期せぬピントのズレが生じてしまうことがあります。冬のアイスランドのような気候条件では、撮影には手袋の着用が必須なので、こうした問題が起こりやすくなります。その点、このレンズのフォーカスロックは非常に優秀で、カメラの電源をオン/オフしても、セットしたフォーカスを保持できます。いったんセットしたら、意図的に調整を加えない限り、そのフォーカスが維持されるのです。私はこの機能を多用しました。また、ラバーが張られた幅広のフォーカスリングは、分厚い手袋をつけていてもマニュアルフォーカスの細かな調節が可能です。レンズにはレンズヒーターを装着できるようになっていて、非常に過酷な条件下で撮影に挑む天体写真家に最適です。レンズのマウント部分にはシートタイプフィルター用のホルダーがあり、ソフトフィルターや光害カットフィルター、昼間の撮影にはNDフィルターも装着可能です。カバータイプのフロントキャップはロック機構付きで、特殊なスロットにフィルターを2枚収納できるユニークな設計となっています。これで、フィルターを忘れてしまう心配もなくなります。Artラインの他のレンズと同様に、SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Artも一切の妥協を排した設計で、非常に堅実な印象を与えます。職人的な技術の粋や光学性能の高さが際立つと同時に、実用性への配慮も行き届いています。
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SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art, SIGMA fp, ISO 1600, F2.8, 1/2000s
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SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art, SIGMA fp, ISO 1600, F1.6, 1/1600s
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SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art, SIGMA fp, ISO 1600, F1.4, 1/125s
冬のアイスランドは非常に厳しい環境です。1週間の滞在のうちで、晴れて星空が見えたのは2晩だけでした。晴れた夜空が見たければ、アイスランド本島の東端に行かなければならない、というのが気象予報の容赦ない宣告でした。私はアイスランドの西端に位置する首都レイキャビクにいたので、島を西から東へ横断しなければなりません。とはいえ、これは私にとって嬉しい誤算でした。というのも、冬のアイスランドを大横断するというのはちょっとした冒険旅行になるからです。はるばる目指すは、オーロラの撮影にぴったりの場所、モニュメンタルな岩のアーチ「アークティック・ヘンジ」です。私が最後にここを訪れたのはもうだいぶ前のことでした。
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SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art, SIGMA fp, ISO 2500, F1.4, 2s
天気予報は的中しました。この場所でも、1晩、快晴の夜空に恵まれました。アイスランド随一の絶景であるヴェストラホルン山の麓に位置するアークティック・ヘンジは、信じられないほど美しい場所です。私はここで、繊細かつ色彩豊かなオーロラの光のダンスを撮影しました。一生に一度はこの場所を訪れ、この素晴らしいスペクタクルを体験することを、私はすべての人々におすすめしたいと思います。
雪に覆われた道路はゆっくりと慎重に進む必要があり、また夜の時間は非常に短いので、私は昼間の撮影も試みることにしました。実際、それはとても楽しい撮影となりました。
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SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art, SIGMA fp, ISO 2500, F9, 1/160s
数枚の写真を撮影しただけで、SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Artの画質の高さはすぐにわかりました。このレンズとSIGMA fpとの組み合わせだと、開放F値1.4でもフレーム全体の星々を収差の発生なくピンポイントでくっきりと捉えることができたのです。これほどの広角レンズでは驚くべきことですが、撮影旅行の間、画質に対する問題を感じたことは一度もありませんでした。「天体写真をうまく撮影できるレンズなら、他のどんな撮影もうまくいく」というのは業界でよく言われていることですが、これは、天体写真の場合、ほんの少しでも光学的に不完全なところがあると、すぐにわかってしまうからです。しかし、このレンズとSIGMA fpとの組み合わせはまさに完璧でした。星の色の再現性、オーロラの色の変化への対応、そして高いISO感度での撮影が可能なことから、私は2年前からオーロラの撮影にはSIGMA fpを使い続けています。今回も期待通りの成果が得られました。適切な道具立てのおかげで、美しいオーロラとともに冬の天の川の繊細な姿を捉えることができたのです。
オーロラは秒単位で姿を変えます。同一のフレーミングで連写しても、1枚1枚全く違う性格の写真になることもあります。ユニークな1枚を得たいなら、同じ場所で複数の写真を撮影し、その中から良いものを選ぶのが賢い方法です。魚眼レンズの曲線的なパースペクティブは面白い視覚効果を生み出し、他のレンズでは実現不可能なイメージを創出する力を与えてくれます。
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SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art, SIGMA fp, ISO 200, F4, 1/2000s
被写界深度の深さも私にとってはありがたい要素です。絞り込むことなく、2〜3m先から無限遠の被写体を完璧なシャープさで捉えられるからです。昼間の撮影では、光量が多く、より絞り込むことができるので、被写界深度をさらに深くできます。さらにHLA駆動の高速オートフォーカスも搭載されているので、どんな状況にも対応可能です。
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SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art, SIGMA fp, ISO 2500, F2, 1/800s
このレンズは、独創的なフレーミングや、面白いパースペクティブの写真を撮りたい写真家にとって、素晴らしいソリューションとなります。広角にもかかわらず、星や風景のディテールをシャープに、かつ高いコントラストで捉えられます。また、明るいレンズなので、夜間撮影にも風景写真の撮影にも使える優れたツールとなります。是非あなたも星空の撮影にチャレンジしてみてください!
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SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art, SIGMA fp, ISO 200, F16, 1/125s
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SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art, SIGMA fp, ISO 2500, F5.6, 1/500s
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SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art, SIGMA fp, ISO 2500, F2, 1/250s
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ミハウ・カウズニ|Michał Kałużny
天体写真家
1974年生まれ。ポズナン芸術アカデミーで写真を学ぶ。写真撮影や天体写真に関する講義やワークショップ、講演を数多く開催。
2005年からは天文学と天体写真の普及活動に取り組む。様々な天文雑誌とコラボレーションし、天体写真の講義を開催。光害の少ない「闇夜」を求めて世界各地を訪れ、撮影旅行を主催している。
夜空の撮影の専門家であり、星団や星雲などを含む天体写真や星景写真の撮影を手がけている。