16mm F1.4 DC DN | Contemporary Impression

カメラ SONY ILCE-7RM2 (APS-C/Super 35mm 入)
シャッタースピード 1/250s
絞り値 F1.6
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 100
ホワイトバランス オート
撮影者 中村 航

© 中村 航 Wataru Nakamura

ソニーEマウントでは24mm相当の広角、マイクロフォーサーズマウントでは32mm相当の準広角・標準。嬉しいF1.4大口径レンズの登場である。F1.4でContemporaryラインのレンズだそうだ。テスト用のレンズを手渡されたときに、ミラーレス一眼用レンズのArtラインがF2.8なのに、なぜこのレンズはContemporaryラインなのかと聞いてみた。担当者曰く、諸収差を極限までコントロールし、光学設計のみで最高水準までレンズの力を磨き上げるスタンスは、どのプロダクトラインでも同じだが、Contemporaryラインでリリースされる今回のこのレンズは、ボディ側が持つ機能を活用しつつ、その他のファクターを追うことに重きをおいたとのこと。F1.4という大口径をまず実現すること。そして、若干発生する歪曲収差についてはボディ側の機能でコントロールするかわりに、ボケ味の良さにこだわり、その他のメリットを追ったというのだ。つまり、より前衛的にレンズ描写の面白さを追ったということである。対して、Artラインのレンズは、完全に光学設計のみでシグマの哲学に相応しいものをラインアップ。だからこそ、その他のミラーレス一眼用レンズはF2.8なのである。

撮影を通して感じたこのレンズの魅力を前段で伝えたいのに、なんとも面倒くさいメーカーである。しかし、ユーザの皆さんにこんな面倒な解説をしなければならないだけある。一連の撮影は本当に楽しいものだった。今回のインプレッションは、すべてSONY α7R IIで撮影を行ったが、このような35mmフルフレームカメラのクロップ機能を用いてAPS-Cサイズのレンズを使用する事も、ひとつの選択肢としておすすめしたい。それほどによい写りをするレンズであり、絵心をくすぐられる描写をする。上のカットをご覧いただきたい。24mm相当でF1.4というだけでも面白いが、開放で実に繊細な描写であり、写り込む範囲のわりには大きなボケが伴う。なにより水面の描写がよい。当日の凪いだ水面が美しく再現描写されている。

カメラ SONY ILCE-7RM2 (APS-C/Super 35mm 入)
シャッタースピード 1/60s
絞り値 F1.4
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 200
ホワイトバランス オート
撮影者 中村 航

© 中村 航 Wataru Nakamura

“周り”を必要とするポートレートに。

モデルはピアニスト、山口ちなみさん。上のカットは「サンプル画像」に掲載したカットである。撮影場所は、撮影スタジオではない。ピアニストが存分に演奏を楽しむための貸スタジオである。防音はしっかりしているものの、当然照明設備などはない。狭い空間にグランドピアノが2台入っているためカメラを構える立ち位置も限られる。光量に乏しく、「インプレッション」というお題目でなければ、光を作り込んで撮影してしまうシーンだ。カメラの性格を考えると感度は上げたくないし、ポートレートであれば三脚はできる限り使いたくない。つまり作り込んだ光なしの手持ち撮影は敬遠したい。F1.4の大口径という明るさにも助けられて、感度アップは最低限に抑えられた。 ポートレートにおいて人物そのものだけを写す以外に、周辺の事象をも人物を彩るものとして活用したいことは多い。前ボケとして入れたピアノ弦も、極めて自然なボケ味であり、ピントを置いたところまでの奥行きも感じられる。広角ポートレートなどに、ソニーEマウントユーザには嬉しい新たな選択肢の登場だろう。ここから少しクロップが入るマイクロフォーサーズマウントのユーザにとっては、準広角・標準大口径として、少しスナップ的な要素を含んだポートレートによいだろう。

カメラ SONY ILCE-7RM2 (APS-C/Super 35mm 入)
シャッタースピード 1/10s
絞り値 F1.4
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 100
ホワイトバランス オート
撮影者 中村 航

© 中村 航 Wataru Nakamura

低照度下での強み

いくらボディの高感度特性がよくなっても、できる限り低感度で撮影できるに越したことはない。焦点距離からそこそこの深度は得られるため、開放で撮るデメリットは少ない。しかし、その描写が締まりの無いものならば話にならないのだが、開放から存分にシャープだ。上の作例は、刻々と状況が変わっていく霧の中で撮影。山の麓の霧をそれなりの距離で撮影するならまだしも、道に流れる霧にしばし待って貰うなど無理な注文。刻々と移り変わる状況の中で三脚にカメラを据えている暇はない。車のライトをつけて光の拡散具合を確認し、広角で引き気味に車を置くのはピンポイント。運転席から降りる間に頭の中でおおよそフレーミング。ボディの防振機能も手伝って1/25秒が切れれば御の字だ。しかし開放から本当によく写る。

カメラ SONY ILCE-7RM2 (APS-C/Super 35mm 入)
シャッタースピード 1/100s
絞り値 F1.4
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 100
ホワイトバランス オート
撮影者 中村 航

© 中村 航 Wataru Nakamura

前ボケの雰囲気はページ1カット目でご覧頂けたと思うが、後ボケの具合もすこぶるよいものだ。設計段階から練りに練ったものだろうと感じる。美しいのはもちろん、量感もあり、それでいて嫌みなところは感じられない。

カメラ SONY ILCE-7RM2 (APS-C/Super 35mm 入)
シャッタースピード 1/2000s
絞り値 F2.8
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 400
ホワイトバランス オート
撮影者 中村 航

© 中村 航 Wataru Nakamura

アンティークの掛け時計。おぼろげな光の中で、キレの欲しい部分はキレて、フォーカスから外れた部分はなだらかに輪郭を失っていく。ロールスクリーンでディフューズされた光がよく再現されている。

カメラ SONY ILCE-7RM2 (APS-C/Super 35mm 入)
シャッタースピード 1/1000s
絞り値 F4
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 64
ホワイトバランス オート
撮影者 是永 哲

© 是永 哲 Satoru Korenaga

絞り込んでの撮影

ローパスフィルターを搭載していないカメラでも、レンズが負けることはない。シグマにはレンズの“甘え”を一切許さないカメラが存在し、挙げ句の果てにそのカメラに搭載されるFoveonセンサーを搭載した測定器を自社開発してテストしているのだから、それもそのはずだ。絞り込んでの撮影は、開放よりも若干画面全体がクリアに晴れる感じは受けるが、基本的に絞り値が進むごとに、単純に深度が深くなるだけである。つまり、開放から存分にシャープなのだ。絞り込んでも線が太るようなことはない。それにしてもF4で、目が痛いほどに写る。かなり昔の話になるが、シグマのレンズといえば色乗りが浅い印象があった。今では、PLフィルターでも使用したのかと思わんばかりの色乗りの良さ。

カメラ SONY ILCE-7RM2 (APS-C/Super 35mm 入)
シャッタースピード 1/2s
絞り値 F5.6
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 100
ホワイトバランス オート
撮影者 中村 航

© 中村 航 Wataru Nakamura

サンプル画像に掲載したカット。F5.6まで絞り、1/2秒ということもあって三脚使用。本の背表紙、トランクの革の質感、ソファの革の張り、申し分ない写りだ。

カメラ SONY ILCE-7RM2 (APS-C/Super 35mm 入)
シャッタースピード 1/1000s
絞り値 F2.8
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 400
ホワイトバランス オート
撮影者 中村 航

© 中村 航 Wataru Nakamura

スナップ・ルポタージュの名手

このレンズに目がとまった皆さんには、釈迦に説法。オールマイティに様々なフィールドで活躍してくれることだろう。ミラーレス一眼用ということもあり、描写性能を磨きつつもハンドリングに関しては現実的なサイズだ。手に入れたなら、存分に楽しんで欲しい。

カメラ SONY ILCE-7RM2 (APS-C/Super 35mm 入)
シャッタースピード 1/60s
絞り値 F1.4
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 320
ホワイトバランス オート
撮影者 中村 航

© 中村 航 Wataru Nakamura

カメラ SONY ILCE-7RM2 (APS-C/Super 35mm 入)
シャッタースピード 1/2000s
絞り値 F2.8
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 100
ホワイトバランス オート
撮影者 中村 航

© 中村 航 Wataru Nakamura

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