イン・フォーカス:郷愁とサウダージ

SIGMA Canon RF Mount Impression

インプレッション

エイラ・クーツ|Ara Coutts

SIGMA 23mm F1.4 DC DN | Contemporary, Canon EOS R7, ISO 6400, F9, 1/1000s, 23mm

私の名前はエイラ・クーツ。職業はアーティストです。経歴を見れば一目瞭然かもしれませんが、アーティストというのは私にとって重要な言葉です。私は8歳の時にカナダに移住し、宗教的に厳格な家庭で育ったので、ポップカルチャーに触れる機会は限られていました。

SIGMA 23mm F1.4 DC DN | Contemporary, Canon EOS R7, ISO 6400, F9, 1/1000s, 23mm

私が初めて手にしたレンズはSIGMAの35mm Artでした。当時はそれが私の手の届く精一杯だったのですが、このレンズは今でも、心理的にも、実用面でも、欠かせないレンズとなっています。私は数え切れないほどたくさんの広告キャンペーンやエディトリアルの撮影を手掛けてきましたが、このレンズのおかげで、自分の思い描いたとおりに世界を捉えられるようになりました。SIGMAの新製品であるキヤノンRFマウント用F1.4単焦点4本は、誰にでも高画質の撮影が可能になるレンズです。私は、写真をセカンドキャリアに選んだシングルマザーとして、プロ写真家を目指すすべての人にこれらのレンズをすすめたいと思います。これらのレンズはまさにゲームチェンジャーです。

SIGMA 56mm F1.4 DC DN | Contemporary, Canon EOS R7, ISO 400, F2.8, 1/640s, 56mm

*撮影データの記載なき写真はSIGMA キヤノンRFマウント用F1.4単焦点以外のレンズで撮影されています。

写真は一瞬の芸術だと考える人は多いでしょう。短い時間を切り取った、静止状態のスナップショット。でも、私の中では、写真はもっと動的で、生きて呼吸をし、常に動き続けている感覚があります。夢を絵に描くような、記憶を光と影に織り上げていくような感じです。幼少期から失読症だった私は、自分をうまく表現できませんでした。写真は言葉を超えた言語を私に与えてくれました。それは人生の真髄を捉えられる言語です。モデルやロケーションだけでなく、周囲の空気の感覚や、レンズの前に立つ人の心、それらが真のストーリーを伝えてくれるのです。

写真は私にとって現実逃避の手段でもあります。私の写真家としてのキャリアの出発点はオンラインの写真講座とチュートリアルで、最初は技術的な側面に意識を向けていました。でも、そのうちすぐに、機材よりもストーリーのほうが重要だということに気付いたのです。SIGMAのレンズが私の撮影に欠かせないものになったのもその頃です。新しいキヤノンRFマウント用レンズは、特にF値1.4のレンズの場合、光量の少ない条件下でも素晴らしい写真が撮影できます。その空間本来の自然な光を利用して撮影することで、ストーリーに真実味が生まれます。SIMGAのレンズなら、それも簡単です。

SIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporary, Canon EOS R7, ISO 400, F2.8, 1/640s, 16mm

今回お見せしているエディトリアルスタイルの撮影は、ファッションとアイデンティティの融合を体現しています。私にとってファッションとは、単なる自己表現にとどまらず、世代の感覚や価値観を映し出す鏡です。衣服というものはすべて、今私たちが生きている時代のストーリーを伝えています。ファッションスタイルには、文化や社会の潮流が反映されているのです。今回の撮影では、SIGMAの最新レンズを用いて、そうしたコンセプトを表現しました。

SIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporary, Canon EOS R7, ISO 400, F2.8, 1/640s, 16mm

SIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporary, Canon EOS R7, ISO 400, F2.8, 1/640s, 16mm

映画と違い、スチル写真には台詞も、雰囲気を演出してくれる音楽もありません。ですから、ストーリーテリングにおいてはロケーションやコスチュームがより大きな役割を果たします。ストーリー性を持たせるために、私は親しい友人たちにコラボレーションを依頼しました。モデルのジョーンは現代的な女性──複雑で、自信に満ちていて、そして官能的な──を演じました。エレガントでありながら反骨心にあふれていて、謎めいた魅力に包まれた、今の時代の女性を表現しています。スタイリストのサシャは、2024年秋冬のトレンドを取り入れたスタイリングで、フェラガモ、ジル・サンダース、そして私がずっと一緒に仕事をすることを夢見ているイヴ・サンローランのアイテムを組み合わせました。さらに、撮影ロケーションにはトロント西部のミラキ・ライフ・スタジオを選びました。その工業的でハードな質感とアーティスティックな雰囲気に、異質なファッションスタイルをぶつけて、強烈なコントラストを生み出すことを狙ったのです。見る人に、1980年代のニューヨーク、「スタジオ54」に代表されるような派手できらびやかなカルチャーに対する郷愁を感じてもらえるような写真を目指しました。

SIGMA 56mm F1.4 DC DN | Contemporary, Canon EOS R7, ISO 400, F9, 1/1000s, 56mm

SIGMA 23mm F1.4 DC DN | Contemporary, Canon EOS R7, ISO 6400, F9, 1/1000s, 23mm

クライアントとの仕事の場合は、こんなプロセスです。すべてのキャンペーンにブランド構築のようなアプローチで臨み、ターゲットとなるオーディエンスの個人的なストーリーや願いを引き出します。それに対して、個人的な作品の場合は、私自身の人生を、何も取捨選択せず、生の状態で提示します。移民であることによる疎外感から、痛みを伴う離婚の経験まで、架空のキャラクターを通して自分自身の体験を共有し、辛くほろ苦い人生の一場面の中にも美しさを見出そうとしています。郷愁、あるいは「サウダージ」には特別な力があります。過ぎ去ったものを追い求める心には、とても深い意味があると私は考えています。

SIGMA 23mm F1.4 DC DN | Contemporary, Canon EOS R7, ISO 6400, F9, 1/1000s, 23mm

「サウダージ」はブラジル独特の表現で、「遠く離れたしまった、あるいはかつて愛していたのに失ってしまったものや人に再び近づきたいと願う、ノスタルジーに満ちた追憶の心」を意味します。「消せない愛」とでも呼べるでしょう。「思い出」を意味する言葉の中で、これほど美しくロマンチックな言葉を私は他に知りません。私が写真で表現したいのは、まさにこの「サウダージ」なのです。私は思い出のように感じられる作品を作りたい。私の最初のインスピレーションは、マリオ・ソレンティの写真集『KATE』でした。まさにサウダージにあふれた一冊で、この本に収められた写真は、私が最も心惹かれるスタイルで撮影されています。少しぼやけていて、少し酔ったような感覚で、白黒の世界です。

SIGMA 23mm F1.4 DC DN | Contemporary, Canon EOS R7, ISO 400, F2.5, 1/250s, 23mm

SIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporary, Canon EOS R7, ISO 400, F2.5, 1/250s, 16mm

私は、撮影には常に単焦点レンズを使用しています。SIGMAのAPS-Cレンズは軽量なので、レンズ交換も簡単で、流れるような動きでスムーズに撮影を行えます。私は飾り気のないアプローチが好きで、大幅なレタッチは行いません。レンズを通じて見た世界を忠実に表現したいからです。SIGMAの新製品レンズで撮影した生のイメージには、豊かな質感と深い精神性が見事に融合したファン・ゴッホの絵画を彷彿とさせるような深みがあります。

SIGMA 23mm F1.4 DC DN | Contemporary, Canon EOS R7, ISO 400, F2.5, 1/250s, 23mm

環境をコントロールできるスタジオ撮影でも、予測不可能な自然光での撮影でも、私はリアルで真実味のある表現を意識しています。私が撮りたいのは、自分自身の人生への眼差しにも通じる写真です。それは、ちょっとぼやけていて、ちょっと不完全な、白黒の夢のようなイメージ──超現実的でありながら、痛いくらい美しい世界です。

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エイラ・クーツ|Ara Coutts

エイラ・クーツ|Ara Coutts

ビジュアルアーティスト、ファッション&広告フォトグラファー、映画監督

トロント在住のファッション&広告写真家。そのアーティストとしてのキャリアは1本のSIGMAのレンズとともに始まった。そのレンズはクーツのクリエイティビティの羅針盤となり、彼女を導いた。写真はクーツの新たな表現言語となり、言葉を超えて感情やストーリーを伝える手段を与えた。クーツの写真は、ファッション、アイデンティティ、そして美しくも切ない郷愁が融合した独自のスタイルを特徴としている。