レンズ界のスイス・アーミーナイフ
ニコラ・ダティシュ
Nicolas Datiche
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"写真が数かぎりなく再現するのは、ただ一度しか起こらなかったことである"
ロラン・バルト『明るい部屋』
10年以上フォトジャーナリストをしてきた私の写真の80%は焦点距離35mmのレンズで撮影されたものです。写真を撮ろうとするときに周囲の環境を考慮する際、私は35mmの構図で考えます。それがもはや自然と身についてしまっているので、さながら私の目には35mmのフレームが入っているようです。
35mmレンズといえば、ドキュメンタリーフォトやフォトジャーナリズムに使われる二大レンズのうちの一本。もう一本は50mmレンズです。アンリ・カルティエ=ブレッソンが50mmレンズの熱狂的なユーザーだった一方、彼の友人であるロバート・キャパが好んだのが35mmレンズです。私が35mmレンズを選んだ主な理由は、それがレンズ界におけるスイス・アーミーナイフだから。被写体をその場に溶け込ませるような風景写真を撮るのに十分な画面の広さを持ち、なおかつ全身または上半身のポートレートも撮れる。フォトジャーナリストとしてひとつのストーリーを報じるとき、象徴的な1枚に凝縮できるとは限らず、様々な写真(広角で撮る状況写真、詳細写真、ポートレート、アクションショット等...)を用いて見る側に伝えることも多いですが、35mmレンズなら、これがやりやすい。仕事中、ほぼどんな状況の撮影にも対応できるユニークなレンズです。ニュースの報道中や雑誌の取材中、私が主に使用するカメラには100%、35mmレンズをつけます。サブのカメラはもう少しフレキシブルで、被写体によって85mmや70-200mmレンズをつけますが、正直なところ、サブのカメラには85mmを好んでつけています。単焦点レンズの方が、撮っていてより心地よいと感じるからです。
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 100, F2.8, 1/2500 s
和紙のはなし
東京の北、槻川の浄水が集落を横切る埼玉県の小さな谷。和紙職人の作業を象徴する、漉き舟(すきふね)の中で泳ぐ漉き簀(すきす)の音が聞こえます。和紙はハンドメイドの紙で、それを作るために必要な紙漉きの技術は一部、ユネスコ無形文化遺産にもなっています。
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 200, F2.8, 1/400 s
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 100, F1.4, 1/8000 s
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 640, F5.6, 1/500 s
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 100, F1.4, 1/1250 s
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 100, F2.8, 1/40 s
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 800, F1.4, 1/1600 s
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 100, F1.4, 1/800 s
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 100, F1.4, 1/400 s
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 400, F4, 1/320 s
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 400, F4, 1/80 s
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 100, F2.8, 1/250 s
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 800, F2.8, 1/800 s
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 640, F5.6, 1/500 s
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 100, F2.8, 1/250 s
紙と写真には古来から繋がりがあります。写真は、カメラ・オブスキュラに映ったイメージを保存したいという人々の願望から生まれ、紙は、カメラが一度だけ見たものを永遠にとどめる手段です。私はこの小さな工房で和紙作りの工程を取材する機会を得たことに感謝しています。そこにある全てが、写真撮影の条件を満たしていました。まず、紙質を確認するために自然光が使われていること、そして和紙作りに不可欠な正確で連続的な動き。このような環境下では、写真家は存在を消さなければなりません。そこで人々がどのように働き、空間を使っているかを、最も自然で率直に取材するためです。ですから、自分のレンズと画作りへの理解が一番役立つ技術だと思います。それがあればどのレンズを使うべきか、どの位置に立つべきかを考える必要がないので、被写体の動きに対応できます。和紙職人と同じリズムで動けるのです。彼が動けば、私も動く。このテンポにのれたとき、撮りたい写真が撮れます。
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 200, F2.8, 1/50 s
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 640, F5.6, 1/500 s
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 500, F4, 1/80 s
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 500, F1.4, 1/500 s
時に写真家は構図について考えすぎますが、私は場に即したいと思っています。被写体を追いながらシャッターを押し「今一つ足りないな」と思ってはまたシャッターを押し、最終的に全てが上手くいくまでそれを繰り返します。被写体の動作と立ち位置、私の立ち位置、そして光、全てが同じリズムのとき、その"一枚"が撮れる。その瞬間は一回の撮影でおそらく一度しか起こらないものですから、もし機材や構図についてあれこれ考えていたら逃してしまうでしょう。
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 100, F2.8, 1/50 s
軽量であることが必須ながら、優れた描写や鮮明さももちろん重要なので、良いF1.4レンズは間違いなく私のストーリーテリングにおける良きパートナーです。F1.4の明るさは、暗い場面だけでなく、必要なときに被写体を際立たせる手助けをしてくれます。加えて、レンズが被写体に寄ることができれば、水や繊維や道具と共に、作られたばかりの新鮮な和紙のディテールを見せることもできます。このレンズは、私のようにストーリーを伝えたい写真家が求める要件、つまり F1.4でのパフォーマンスの良さ、速くて信頼のおけるAF、心地よい絞りリング、そして特にこのような明るいレンズにおいて私が重要視するサイズ感を全て満たしています。先にも述べたように、被写体のテンポに合わせて彼らのパーソナルスペースとコンフォートゾーンに入り込む必要があるため、彼らを怖がらせたり心地悪くさせたりしないレンズでなければ、その瞬間を捉えることはできません。SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Artは、まさにそういったレンズとして伝説的なデジタル一眼レフカメラ用レンズ、SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Artの評判を余すことなく受け継いでおり、長年SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Artを使ってきた私からすれば信頼できるレンズであることは疑いようもありません。この小さなレンズはまさに"懐"に、すっぽりと収まってくれます。
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art, SIGMA fp, ISO 100, F1.4, 1/2500 s