ヤマユリ / Mountain Lily

押本龍一「私の出会う光景」｜第347回

押本龍一「私の出会う光景」

July 03, 2024

ハイキングトレイル脇にヤマユリの茎が8本ほどあり、そのうちの2本は120cmほどの草丈で、2本とも見事な花が1つ咲き、開花間近な蕾が2つ付いていた。奥の茎に咲く花のめしべとおしべ付近にピントを合わせ、周辺と背景に大きく美しいボケを得た深みのある写真が撮れたと思う。

(注)PC版では左右がクロップ表示されるので、ダウンロードボタンをクリックして見て欲しい。

【使用機材】 fp L , 28-45mm F1.8 DG DN | Art

届いた新レンズの「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art」を手にした時、花の近接撮影に良さそうなレンズだと思った。ズーム倍率1.6倍だが、被写体が近い場合は僅かな焦点距離でも大きな違いになり、明るいレンズの大きなボケも期待出来るからだ。数日前、神奈川県三浦郡葉山町にある三ヶ岡山緑地のアジサイコースでヤマユリの蕾を見かけていた私は、新レンズを手にした日の夕方、アジサイコースへ向かった。

この日の夕方は、空は雲に覆われ湿気が高く森も暗かったが、トレイルを登って最初に出会ったヤマユリの花は瑞々しく、重苦しい空気を吹き飛ばしてくれた。地面から50cmほどの高さに咲いた花を見上げて開放F値で撮影した写真は、大きく美しいボケ味が得られ、高い位置に咲く花と蕾が森の中に溶け込んでいるように写った。

【使用機材】 fp L , 28-45mm F1.8 DG DN | Art

この日は出かけたのが遅く、多かった蚊への対策もしていなかったので撮影は少しで切り上げ、翌日トレイルへ再び登った。アジサイコースのスタート地点には、3,000株の紫陽花があり、「かながわ花の名所100選」にも選ばれている「あじさい公園」があるが、今回はヤマユリだけを撮ろうと決め、この公園には立ち寄らなかった。この日は快晴で、森は明るく緑も濃く見えた。前日に撮ったヤマユリから40mほど先に登った所には、8本ほどのヤマユリの茎があり、そこで花と蕾を入れたタイトル用の写真を撮影した。その後、天気が良かったので、標高約140mの三ヶ岡山（大峰山）まで登り、西の尾根コースから真名瀬コースで下山した。

前日と比べるとこの日は森がとても明るく、前日撮ったヤマユリの所まで登ると花が1つ増え、表情を変えた清々しい森に感動した。前日とほぼ同じアングルと焦点距離で撮影したが、F値は前日の開放F値から絞リングを左へ4つ、カチカチという音を指先で感じながら回し、午後の陽光で明るい森と2つの花の存在を少し強めてみた。

【使用機材】 fp L , 28-45mm F1.8 DG DN | Art

タイトル写真を撮った場所から2mほど奥に咲くヤマユリの花は、開花したばかりの花と比べると勢いはなかったが、午後の光を浴びて森の中で目を引く存在だった。

【使用機材】 fp L , 28-45mm F1.8 DG DN | Art

森の整備のためのモノレールとハイキングトレイル間の草むらに咲いたヤマユリの花。花の正面からではなかったが、午後の光が透過光になりいい光景だった。

【使用機材】 fp L , 28-45mm F1.8 DG DN | Art

西の尾根コースに咲いていたヤマユリの花は、開花してしばらく経っている様に見えた。草丈は40cmほどだったので、地面から見上げる様にして撮影した。その後、この先にはヤマユリの花は1つも見なかった。

【使用機材】 fp L , 28-45mm F1.8 DG DN | Art

タイトル写真用に撮影した2本の茎は蕾の方が多かったので、その茎の様子を見に翌日もアジサイコースへ行ってみた。前日、森の整備をする係の方が、蚊取り線香を腰にぶら下げているのを見たので、この日、小さな蚊取り線香を腰に付けて行動した。その効果は大きく、撮影に集中出来た。

前日、タイトル写真用に撮った2本の茎は1つの蕾を残し開花していた。その他の茎からも花が咲き、群生とまではいかないが、ヤマユリのスポットとなっていた。

【使用機材】 fp L , 28-45mm F1.8 DG DN | Art

タイトル写真用に撮った写真でフォーカスした同じ花のめしべの柱頭にピントを合わせた。右手前の2つの花と左奥の花は、前日は蕾だった。

【使用機材】 fp L , 28-45mm F1.8 DG DN | Art

タイトル写真を撮った場所から5mほど先にある茎は、花と蕾が１つずつあり草丈40cmほどだった。上から見下ろすように撮影し、ピントはめしべの柱頭に合わせた。

【使用機材】 fp L , 28-45mm F1.8 DG DN | Art

翌日は大雨だったが、残された蕾が開花したかもしれないのでアジサイコースへ行くことにした。午前11時過ぎ、アジサイコースに入る手前で町内に大雨注意報が出され、風も強くなってきたが、三ヶ岡山緑地へ入った。

タイトル写真に撮影した茎の蕾は全て開花し、花は雨に打たれて風に揺れ、花弁の黄色い帯状の筋は大雨で滲んでいた。

【使用機材】 fp L , 28-45mm F1.8 DG DN | Art

大雨の翌日は快晴で暑い日になった。私は雨の後のヤマユリ見たくなり、アジサイコースへ向かった。天気に恵まれたこの日、入り口付近の「あじさい公園」には多くの人が訪れていた。アジサイコースでは、トレイルランナーとハイカーが多く、誰にも会わなかった大雨の前日とは打って変わり、三ヶ岡山緑地は賑やかだった。

ヤマユリは開花したての瑞々しさが薄れてはいたが、トレイルを通過する人の目を楽しませていた。そして、前日の大雨の日と比べると雰囲気のかなり違う写真になった。

【使用機材】 fp L , 28-45mm F1.8 DG DN | Art

2日前、上から見下ろすように撮影した花の手前の蕾が開いていた。

【使用機材】 fp L , 28-45mm F1.8 DG DN | Art

今回はほぼ同じ場所へ5日間通い、天候の違いとヤマユリが変化する様子を観察するように撮影してみた。使用した「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art」は、花等の近接撮影に良さそうなレンズだと冒頭で書いたが、思った通りだった。描写力はズーム全域で単焦点レンズに引けを取らないし、とにかく操作感が良い。今回は大きな風景を撮らなかったが、色々と試したくなる規格外のズームレンズだ。