志賀島 / Shikanoshima
押本龍一「私の出会う光景」|第345回
押本龍一「私の出会う光景」
June 03, 2024
鳥居が立つ島の低い土地の向こうに波しぶきが見えた。私は、青空を背景にした白い波しぶきのある光景を撮ろうとしばらく待ったが、波しぶきはなかなか上がらなかった。島の対岸に押し寄せる波自体は見えず、波しぶきは突然上がる。波しぶきは5分ほどの間隔で上がったと思うが、カメラを構えてから最初の波しぶきは逃し、2度目に撮ることができた。沖津島(おきつじま)は、志賀島(しかのしま)北端60mほどの沖合にあり、大潮の干潮時には徒歩で渡れる陸繋島だ。
(注)PC版では左右がクロップ表示されるので、ダウンロードボタンをクリックして見て欲しい。
【使用機材】 fp L , 65mm F2 DG DN | Contemporary
5月の初め、初夏のような陽気だった滞在先の福岡県太宰府市から、同県の福岡市東区にある志賀島まで足を伸ばしてみた。島の南部と西部は博多湾に接し、北部と東部は玄界灘に接する志賀島は、砂州により九州本土と陸続きになった陸繋島で、そのサイズは面積5.78km²、海岸線長11 km。私は、車のナビの目的地を島の南東岸に位置する志賀海神社の駐車場に設定し、朝の8時半、滞在先の太宰府市内から島へ向かった。九州本土から志賀島までは、全長約8km、最大幅約2.5kmの巨大な陸繋砂州である海の中道(うみのなかみち)を経て渡ることが出来る。志賀島へ渡る最後の区間には、長さ97mの志賀島橋が架かり、橋が竣工(1930年)される前は、潮が満ちると道が無くなることから「道きり」と呼ばれていた。私は、目的地に9時過ぎに到着し、古来より「海神の総本社」「龍の都」と称され、玄界灘に臨む海上交通の要衝である博多湾の総鎮守として崇拝されてきた志賀海神社の境内まで石段を上った。
御潮井(おしおい)と呼ばれる清め砂が、境内へ上る石段前に置かれている。この砂で体を清め、まだ見ぬ境内に期待感を持って石段を登った。
【使用機材】 fp L , 20mm F2 DG DN | Contemporary
一直線に伸びた参道を行くと楼門が見えてくる。御祭神は、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)の禊祓(みそぎはらえ)によって出現した海の底、中、表を守る海の主宰神である綿津見三神(わたつみさんしん)。志賀海神社は、綿津見三神を祀る全国の綿津見神社の総本社で、4月と11月の例祭において「君が代」の神楽が奉納される珍しい神社だ。
【使用機材】 fp L , 65mm F2 DG DN | Contemporary
楼門に上る石段の左手前にある山之神社の苔むした鳥居は、大きくはないが存在感があった。「御祭神は、大山津見神。御神徳は縁結び、夫婦円満、開運。おこぜやあらかぶを供えると、その顔立ちの悪さを見て滑稽に思われ、快く願いを叶えてくれる。又、空の財布を供えて願い持ち帰ると財が貯まると云われ、幸福の水先案内の神として信仰されている」と案内板にあり、ユニークな祭神だと思った。
【使用機材】 fp L , 65mm F2 DG DN | Contemporary
神功皇后が三韓出兵のときに対馬で鹿狩りをして、そのシカの角を奉納したことがはじまりとされ、その後は武将や権力者が奉納し、今では1万頭分の鹿の角が奉納されている鹿角堂「しかつのどう」。ぎっしりと詰め込まれた鹿の角は、物言わず色もなかったが、まだ丈夫で硬そうだった。
【使用機材】 fp L , 65mm F2 DG DN | Contemporary
女性が手を合わせている拝殿右側の遥拝所(ようはいじょ)には、神功皇后(じんぐうこうごう)が、三韓征伐の際に安全祈願したところ、海から雄雌の黄金の亀に乗った神々が現れて導き、その亀が石になって志賀島に流れ着き奉納されたとの伝説がある、雄雌二つの亀石が祀られている。
【使用機材】 fp L , 65mm F2 DG DN | Contemporary
私が境内に上がった頃から参拝者が増え、境内で写真を撮るのは早めに切り上げた。境内の西端にあるトイレを借りてから何気なく下を見ると、高台にある境内から小さな滝が下に見えたので、石段を下り、境内の西側に流れる川沿いの道を上ってみた。
お昼近くなると参拝者が増えたが、境内へ続く石段は高齢者には急坂だ。
【使用機材】 fp L , 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports
境内から見えた小さな滝を狭い車道の端から撮影した。志賀島で滝を撮れるとは思っていなかったので、ちょっと嬉しかった。川は古い地図によると天竜川と記されているが、「龍の都」と称されてきた志賀海神社と関係があるかもしれない。
【使用機材】 fp L , 20mm F2 DG DN | Contemporary
志賀島は海に囲まれた豊かな森の島だった。車を停めた駐車場へ戻ると、森の中へ入って行くような境内へ上る入り口があり、そこにも鳥居の前に清め砂が備えてあった。
【使用機材】 fp L , 20mm F2 DG DN | Contemporary
島の南東岸に位置する志賀海神社からは、志賀島の海岸部を一周する県道542号で北岸へ走り、ゴールデンウィーク中で賑わう休暇村前の駐車場に車を停めた。玄界灘に面した下馬ヶ浜へ出ると、海岸の北に小さな島が見えた。こんもりとした小高い山の様な島は、濃い緑に覆われ、白っぽい鳥居が島の低い部分に立ち、海岸を500mほど歩いて近づいてみた。
休暇村前の海岸から陸続きにも見えた沖津島は、陸から60mほどの沖合に浮かんでいた。大潮の干潮時に歩いて渡ることが出来るようだが、「水難事故が発生しました。沖合及びこの近辺は、潮の流れが速く危険です。注意して下さい。」と書かれた注意書きが海岸に立っていた。島には、志賀海神社の沖津宮があり、そこは女人禁制のようだ。
【使用機材】 fp L , 20mm F2 DG DN | Contemporary
下馬ヶ浜からは県道542号線を島の西南まで走り、志賀海神社の一之鳥居が立つ車道へ入り、石段前で滝を撮った狭い道を上り、島の最高点標高である海抜165mの潮見公園へ向かった。公園に至る森の中の道では、すれ違った車は1台だけだったが、道が狭いので対向車に気をつけて慎重に運転した。
玄界灘の青と志賀島の森の緑が色鮮で美しく、展望台にいた女性達が「猫が多いのよねー」と話していた玄界灘に浮かぶ面積:1.22km²、海岸線長5.4kmの相島(あいのしま)が鮮明に見えた。
【使用機材】 fp L , 65mm F2 DG DN | Contemporary
玄界灘、海の中道(うみのなかみち)、福岡湾、福岡市街までよく見えた。島の最高点である標高165mにある潮見公園の展望台からは、360度のパノラマが見渡せ、島に来たら必ず上りたい絶景ポイントだ。
【使用機材】 fp L , 20mm F2 DG DN | Contemporary
この日、大した下調べせずに来た志賀島は、志賀海神社からスタートし、海岸線を反時計回りで走り、最後は島の最高点で周囲を見渡した。志賀島は、現在の福岡市付近にあったとされる奴国(なのくに)の王が,西暦57年に中国古代王朝の後漢へ渡り、光武帝より受けたとされる純金製の印である金印(きんいん)が、天明4年(1784)に発見されたことで知られる。金印が島の何処で見つかったのかは正確に分からないそうだが、島の南岸にある金印公園は立ち寄るべきだったかもしれない。風光明媚な志賀島は、歴史も深く、言い伝えも多い。次回福岡に来る機会があれば是非再訪問したい。
風が強かった志賀島を動画でも少し撮影した。
志賀島
撮影風景と機材
樹木に囲まれた志賀海神社ではあまり感じなかったが、海岸線は非常に風が強く、潮の香りに包まれて行動した一日だった。
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 65mm F2 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/640s
絞り値
F5.6
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
65mm
カラーモード
風景
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/400s
絞り値
F4.0
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
20mm
カラーモード
スタンダード
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 65mm F2 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/320s
絞り値
F4.0
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
65mm
カラーモード
スタンダード
ホワイトバランス
オート
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 65mm F2 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/200s
絞り値
F2.8
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
125
焦点距離
65mm
カラーモード
スタンダード
ホワイトバランス
オート
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 65mm F2 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/160s
絞り値
F5.0
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
400
焦点距離
65mm
カラーモード
切
ホワイトバランス
オート
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 65mm F2 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/250s
絞り値
F4.0
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
65mm
カラーモード
スタンダード
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports
シャッタースピード
1/500s
絞り値
F5.6
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
200
焦点距離
124.8mm
カラーモード
スタンダード
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/60s
絞り値
F4.0
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
200
焦点距離
20mm
カラーモード
フォレストグリーン
ホワイトバランス
オート
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/320s
絞り値
F5.6
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
20mm
カラーモード
フォレストグリーン
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/500s
絞り値
F6.3
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
20mm
カラーモード
風景
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 65mm F2 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/500s
絞り値
F5.6
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
65mm
カラーモード
風景
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/250s
絞り値
F8.0
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
20mm
カラーモード
風景
ホワイトバランス
晴れ
使用機材
押本 龍一
フォトグラファー
東京品川生まれ。1982年留学予定で渡米。1984年ニューヨークへ渡り広告写真スタジオで働き始める。1991年フォトグラファーとして独立。1995年ニューヨークからロサンゼルスへ移動。2018年より日本を拠点にし現在に至る。