鹿島海軍航空隊跡 / Kashima Naval Air Base Ruins
押本龍一「私の出会う光景」|第340回
押本龍一「私の出会う光景」
March 29, 2024
建物内に入りまず目に付いたのは、トタン屋根が抜けた天井部だった。U字状のレールにはチェーンブロックが据え付けられ、何かを製造していた工場跡にも見えた。 発電機類を設置する台座を含む、複雑な形状をしたコンクリートの床も特徴があった。
ここは、茨城県の霞ヶ浦南岸に残る「鹿島海軍航空隊」の施設だった自力発電所跡だ。私は建物の隅に立ち、建物内部の端から端まで写し込んだ。廃墟感が漂う空間は、くすんだ色の写真に仕上げたく、カラーモードは「切」を選択した。
(注)PC 版では左右がクロップ表示されるので、ダウンロードボタンをクリックし、対角魚眼レンズの迫力ある歪曲効果、画角180°の独特な遠近感、画面隅々まで高解像に写し出す描写力を確認して欲しい。
茨城県南東部に、日本の湖沼では琵琶湖についで2番目に大きな霞ヶ浦が広がっている。大きな湖の南岸にある茨城県美浦村には、かつて大日本帝国海軍航空隊の部隊のひとつで、水上機の実習訓練施設として発足した「鹿島海軍航空隊」が存在した。その跡は整備され、去年の7月から「大山湖畔公園」として週末限定で一般公開が始まった。
私は、3月最初の日曜日、神奈川の自宅を朝7時過ぎに出て、車で跡地へ向かった。現地には朝9時過ぎに到着。訪問者の姿はまだ見ない自動車倉庫跡で見学料を払い、ガイドブックをもらい、10時からのガイドツアー前に本庁舎周辺を少し歩き回った。
少し前まで本庁舎の影に隠れていた折れた電柱が、朝陽を浴びてその存在をアピールしているように見えた。
建物はもう残っていない士官宿舎跡と本庁舎の建物。在籍者は一時、千人を超えた施設を想像して撮影した 。
ガイドツアーには、 2組の友達同士のグループ、写真を撮りに来た感が溢れている単独で参加した年配男性、私を入れて8人が参加した。グループの先頭には案内役が1名、グループの後ろにはアシスタント役が1名付き、2人とも女性だった。ガイ ドさんなしでは入れない場所も多く、写真も割と自由に撮れたのでツアーに参加して正解だった。
ガイドさんなしでは入れない軽油庫跡。狭い通路は外光が入る入口付近は明るかったが、奥は真っ暗だった 。中を見て「暗いなー」と呟くと、ガイドさんが「ライトをどうぞ」と懐中電灯を手渡してくれた。
本庁舎の建物の中には入れるが、 見学できる場所は制限されている。ガイドさんなしでは入れないこの広い部屋は、窓から外光が入る絵になる部屋だった。
本庁前で見かけた波と錨のマークが入った海軍施設らしい止水栓蓋。ガイドさんが指差さしてくれなかったら見逃していただろう。
「鹿島海軍航空隊」は、1937年、「安中水上機着陸場」と「安中水上基地」が完成し、1938年5月11日、「霞ヶ浦海軍航空隊安中水上隊」として開隊。1938年8月30日、「鹿島海軍航空隊」と改称し、1938年12月15日、「鹿島海軍航空隊」として正式に開隊した。アジア太平洋戦争開戦後は、内地防衛、搭乗員教育、鹿島灘対潜作戦の任務を担い、戦争末期には特別攻撃隊を編成。沖縄戦においては特攻作戦に従事し、隊から数十名の戦死者が出て、1945年8月15日、終戦により解隊した。戦後、施設の一部は、東京医科歯科大学病院の分院として結核患者の治療に使用されたが、1997年の閉院後は長い間放置されて廃虚となり、心霊スポットとも呼ばれた。ガイドツアーの後、私は独りで鹿島海軍航空隊跡を見て歩いた。
ボイラー室の高さ約35mの煙突はどこからでも見えたが、近寄って見上げるのが一番だった。
大口径標準レンズの大きく美しいボケ味を活かして撮影。
【使用機材】 fp L , 50mm F1.4 DG DN | Art
ガラスのない窓越しに外から大きなボイラー室を覗き見る。
晴天下、キラキラと光るススキにフォーカスし、ボイラー室と煙突を大きくぼかした。
【使用機材】 fp L , 50mm F1.4 DG DN | Art
自力発電所跡に残された高圧受電盤。屋根が抜けて雨風にさらされている割には、良い状態で残っている。
物乾場跡は非常に頑丈な造りで、説明がなければ何だかわからなかったと思う。
【使用機材】 fp L , 50mm F1.4 DG DN | Art
週末限定で一般公開されている敷地の外、霞ヶ浦の湖岸にある 水上機の射出機(カタパルト)跡。
一時は廃虚となっていた鹿島海軍航空隊跡は、美浦村が2016年に約4ヘクタールを購入。当初はスポーツ施設やオートキャンプ場をつくる構想だったが、「戦争関連の遺構として残すべきだ」と声が上がった。村から管理運営を任せられている会社「プロジェクト茨城」が、映画やドラマのロケ地として誘致し、クラウドファンディング を通して跡地の整備費用の協力を求め、史跡公園「大山湖畔公園」として残された。敷地の一部は国の研究機関や民有地になっているが、鹿島海軍航空隊跡は十分に広く、見応えがあった。週末限定の公開だが、管理されている敷地の外にも海軍航空隊跡が見られるので、霞ヶ浦に来ることがあれば平日でも立ち寄りたい湖岸の一角だ。
鹿島海軍航空隊跡(大山湖畔公園)
撮影風景と機材
常識を覆す解像力と強烈な個性を持つ対角魚眼レンズのSIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Artをメインに、同じArtラインから大きく美しいボケ味が特徴のSIGMA 50mm F1.4 DG DN | Artも使用した。 180°と46.8°の画角の違いを楽しみながら撮影した一日だった。
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art
シャッタースピード
1/160s
絞り値
F8.0
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
15mm
カラーモード
切
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art
シャッタースピード
1/500s
絞り値
F5.6
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
15mm
カラーモード
ニュートラル
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art
シャッタースピード
1/640s
絞り値
F5.6
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
15mm
カラーモード
シネマ
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art
シャッタースピード
1/125s
絞り値
F4.5
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
1000
焦点距離
15mm
カラーモード
パウダーブルー
ホワイトバランス
オート
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art
シャッタースピード
1/125s
絞り値
F5.6
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
400
焦点距離
15mm
カラーモード
スタンダード
ホワイトバランス
色温度指定
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art
シャッタースピード
1/400s
絞り値
F8.0
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
15mm
カラーモード
モノクローム
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art
シャッタースピード
1/2500s
絞り値
F1.4
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
50mm
カラーモード
シネマ
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art
シャッタースピード
1/125s
絞り値
F5.6
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
15mm
カラーモード
スタンダード
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art
シャッタースピード
1/2000s
絞り値
F2.8
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
50mm
カラーモード
切
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art
シャッタースピード
1/400s
絞り値
F8.0
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
15mm
カラーモード
スタンダード
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art
シャッタースピード
1/400s
絞り値
F5.6
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
50mm
カラーモード
ニュートラル
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art
シャッタースピード
1/400s
絞り値
F6.3
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
15mm
カラーモード
風景
ホワイトバランス
晴れ
押本 龍一
フォトグラファー
東京品川生まれ。1982年留学予定で渡米。1984年ニューヨークへ渡り広告写真スタジオで働き始める。1991年フォトグラファーとして独立。1995年ニューヨークからロサンゼルスへ移動。2018年より日本を拠点にし現在に至る。