池子の石切場跡 / Ikego stone quarry ruins

押本龍一「私の出会う光景」｜第337回

押本龍一「私の出会う光景」

February 07, 2024

天井が高い神殿のようにも見えるこの場所は、逗子市の森にある石切場跡の内部。入り口が東に面しているので、太陽の光が差し込む午前中に訪問して正解だった。

【使用機材】 fp L , 17mm F4 DG DN | Contemporary

ついこの間新年を迎えたと思っていたら、1月も残すところあと二日となった晴天の日、逗子市・池子にある石切場跡へ向かった。朝の9時半頃、京急逗子線神武寺駅で下車し、線路脇の車道を北へ500メートル歩き、鷹取山方面へのサインが立つ中学校脇の車道に入った。そこから更に550メートル東へ歩いた車道の行き止まりにある老人ホームの事務所に立ち寄り、石切場跡へは老人ホームの敷地内を通って行くので、女性スタッフに石切場へ行きたいと伝えると、丁寧に行き方を教えてくれ、「石切場、楽しんで下さい！」と笑顔で送り出してくれた。

老人ホーム裏の駐車場から石切場へ登る。この辺の地層は、凝灰岩（ぎょうかいがん）、シルト岩･凝灰質砂岩（ぎょうかいしつさがん）互層（ごそう）から成る池子層と呼ばれている。

【使用機材】 fp L , 17mm F4 DG DN | Contemporary

老人ホームの裏手に入ると砲弾のようなものが岩の上にあった。かつて池子には（現在は米軍住宅が建つ場所）日本海軍が巨大弾薬庫を造ったが、それと関係があるのかな？とも思ったが、触ってみても何だか分からなかった。

【使用機材】 fp L , 90mm F2.8 DG DN | Contemporary

草に覆われた道を歩いて行くと森の中に突然現れる石切場跡。外から見ると歴史を感じる戦時中の軍事施設にも見える。

【使用機材】 fp L , 17mm F4 DG DN | Contemporary

機械ではなく石工がのみで石を切り出していた石切場跡の内部を外から覗く。

【使用機材】 fp L , 45mm F2.8 DG DN | Contemporary

積石に陽光が照らしていた時間は短く、限られている時間にこの場に居たことはラッキーだった。

【使用機材】 fp L , 45mm F2.8 DG DN | Contemporary

波打つような土の床部分は天井から落ちる湧き水によるものだろうか。歩く足音が響き渡る石切場跡内部の奥行きは25mほど。

【使用機材】 fp L , 17mm F4 DG DN | Contemporary

草木で覆われた森の間から差し込む陽光により、柱を覆うイワタバコの葉は青々しく、のみで削った跡が力強く見えた。

【使用機材】 fp L , 17mm F4 DG DN | Contemporary

大きな石が転がり、歩きにくい場所から写真を撮って石切場跡から離れた。

【使用機材】 fp L , 17mm F4 DG DN | Contemporary

この日は快晴で陽光も差し込む時間帯だったが、石切場の内部はひんやりして外部より温度が大分低く、吐く息が白く見えた。老人ホーム裏庭の神武寺・鷹取山へ至る道に移動すると、逗子市による石切場跡の説明板が立っていた。「明治の末頃から大正時代にかけて、この周辺の山から灰褐色の凝灰岩を切り出す仕事がありました。池子石と呼ばれ、堀、垣根、土台、護岸、井戸などの土木建築材料の他、墓石、灯籠等に使用されました。切り出された石は、木のそりとトロッコを使って、現在の逗子中学校の体育館辺りまで運ばれ、そこからは馬力と呼ばれる荷馬車で各地に運ばれて行きました。現在でも逗子市内では、田越川の護岸や旧家の屋敷の石堀、寺社の石段など市内に池子石を見ることが出来ます。」

石切場跡の東にある山道を東へ登った。

【使用機材】 fp L , 17mm F4 DG DN | Contemporary

太陽に向かい湿っている山道を登る。

【使用機材】 fp L , 90mm F2.8 DG DN | Contemporary

谷になり小さなクリークが流れる湿った老人ホームの裏庭周辺から、ゆっくりと山道を東へ登り、神武寺の惣門が先に見える参道と鷹取山ハイキングコ－スを兼ねる山道に30分ほどで至った。逗子市沼間にある醫王山（いおうざん）神武寺は、北条政子の安産祈願に際して神馬を奉納したことや源実朝が参詣したと伝わる天台宗の寺院。池子石を使用した石段等も見られる境内を少し散策した後、JRの東逗子駅まで歩き帰路に付いた。